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副業イラストレーターのための経費ガイド:どこまで計上できる?具体的な例と注意点

Tags: 副業, イラストレーター, 経費, 確定申告, 節税

副業で収入を得ている方にとって、税金は避けて通れないテーマです。特に、フリーランスとしてイラストレーターの副業をされている方の中には、「何が経費になるのか」「どうやって計上すれば良いのか」といった疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

経費を正しく理解し計上することは、所得税や住民税の負担を軽減し、手元に残るお金を増やすために非常に重要です。このガイドでは、副業イラストレーターの皆様が経費に関して知っておくべき基本的な知識から、具体的な経費の例、そして計上する際の注意点までを分かりやすく解説していきます。

1. そもそも「経費」とは何でしょうか

経費とは、事業を行う上で発生した「必要かつ合理的な費用」のことです。個人事業主や副業をしている方の場合、収入からこの経費を差し引いた金額が「所得」となり、その所得に対して税金が計算されます。

例えば、副業イラストレーターであれば、イラストを描くために購入した画材やソフトウェア、仕事のために使った交通費などが経費に該当します。経費を多く計上できるほど所得が少なくなり、結果として支払う税金が少なくなるため、「節税」に繋がると言えます。

重要なのは、その費用が「事業に直接関係するものか」という点です。プライベートな支出は経費にはできません。

2. 副業イラストレーターが経費にできる具体的な費用例

副業イラストレーターの皆様が実際にどのような費用を経費として計上できるのか、具体的な例を挙げながら解説します。

2-1. 材料費・消耗品費

イラスト制作に直接使用するものが該当します。 * 画材費: コピック、絵の具、筆、紙、キャンバスなど。 * デジタルデバイス関連費: 液タブ、ペンタブ、パソコン本体、モニターなど。これらは高額な場合、後述の「減価償却費」として複数年にわたって経費計上することもあります。 * ソフトウェア・ライセンス料: Photoshop、CLIP STUDIO PAINTなどのイラスト制作ソフトの購入費用や月額・年額の利用料。フォントライセンスも含まれます。 * 消耗品: プリンターのインク、USBメモリ、文房具(ノート、ペンなど)、PC周辺機器(マウス、キーボードなど)など、事業で使用するものが該当します。

2-2. 通信費・水道光熱費・地代家賃(家事按分)

自宅で作業を行う場合、これらの費用の一部を経費にできます。これを「家事按分(かじあんぶん)」と言います。 * 通信費: インターネット回線使用料、携帯電話の通信料など。 * 水道光熱費: 電気代、ガス代、水道代など。 * 地代家賃: 持ち家の場合の固定資産税や住宅ローンの金利、賃貸住宅の家賃など。

家事按分とは、生活と事業で共用している費用を、事業で使っている割合に応じて経費として計上することです。例えば、家賃の一部を仕事部屋として使っている場合、その面積比や使用時間に応じて按分します。明確な基準はありませんが、合理的な説明ができる割合を設定することが重要です。 例:家賃10万円の20%を事業用に使用している場合、2万円を経費にできます。

2-3. 交通費

仕事に関する移動費用が該当します。 * 打ち合わせのための移動費: クライアントとの打ち合わせ、イベント参加のための電車賃、バス代、タクシー代など。 * 画材や機材購入のための移動費: 店舗への移動費用。

2-4. 新聞図書費・研究開発費

スキルアップや情報収集のための費用です。 * 書籍代: イラスト技法書、ビジネス書、デザイン関連雑誌など。 * セミナー・勉強会参加費: イラストスキル向上、マーケティング知識習得のためのセミナーやウェビナーの受講料。 * オンライン講座受講料: Udemy、SkillShareなどのプラットフォームでの学習費用。

2-5. 広告宣伝費

自身の作品やサービスを宣伝するための費用です。 * ポートフォリオサイトの運営費用: ドメイン代、サーバー代。 * SNS広告費: Instagram、X(旧Twitter)などでの広告掲載費用。 * 名刺制作費: 営業用の名刺の印刷費用。 * 展示会出展費用: 作品を展示するためのブース費用など。

2-6. 接待交際費

仕事の関係者との飲食費などが該当します。 * 打ち合わせ時の飲食費: クライアントや協力者とのカフェ代、会食費。 * お歳暮・お中元: 仕事関係者への贈答品。

2-7. 減価償却費

高額な固定資産(10万円以上)を購入した場合に適用される費用です。 パソコン、高額な液タブ、一眼レフカメラなど、耐用年数が1年以上の高額な資産は、一度に全額を経費にせず、法律で定められた年数にわたって少しずつ経費として計上します。これが減価償却費です。

3. 経費計上における重要なポイントと注意点

経費を正しく計上し、税務署に説明できるようにするためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

3-1. 領収書・レシートは必ず保管する

経費を計上するためには、その費用が発生したことを証明する書類が必要です。領収書やレシート、クレジットカードの明細、銀行の取引履歴などを整理して保管しましょう。電子データで保存することも認められています(電子帳簿保存法)。

3-2. 「事業に必要」であることを明確にする

どんな費用でも経費にできるわけではありません。税務調査などがあった際に、「なぜその費用が事業に必要だったのか」を明確に説明できることが重要です。個人的な支出と事業用の支出は明確に区別しましょう。

3-3. 家事按分の合理的な割合を設定する

前述の通信費や水道光熱費、地代家賃などを家事按分する際は、事業での使用実態に基づいた合理的な割合を設定してください。例えば、事業で使っている部屋の面積比、パソコンの作業時間比など、根拠が説明できる数字を用いることが大切です。

3-4. 帳簿付けの重要性

経費を計上するためには、日々の収入と支出を記録する「帳簿(ちょうぼ)」が必要です。 Excelで簡易的に管理する方法もありますが、会計ソフト(例:freee、MFクラウド会計、やよいの青色申告オンラインなど)を活用すると、簿記の知識がなくても簡単に記帳ができ、確定申告の書類作成もスムーズに進められます。

まとめ:正確な経費計上で賢く節税を

副業で得た収入に対する税金は、経費を正しく計上することで大きく変わる可能性があります。どこまでが経費になるのか、具体的なイメージが掴めたでしょうか。

重要なのは、全ての費用を証明できる書類を保管し、「事業に必要不可欠な費用である」と明確に説明できるように準備しておくことです。日々の記帳は手間がかかるように感じるかもしれませんが、会計ソフトなどを活用すれば、意外と簡単に進めることができます。

ご自身の副業の状況に合わせて、適切な経費計上を行うことで、税金に関する不安を解消し、安心して副業を続けていきましょう。もし不明な点があれば、税務署の相談窓口や税理士に相談することも有効な手段です。