副業イラストレーターのための青色申告と白色申告:違いと選び方を徹底解説
副業でイラストレーターとして活動され、ある程度の収入を得ている皆様にとって、確定申告は避けて通れない手続きの一つです。確定申告には主に「白色申告」と「青色申告」という2つの方法があります。どちらを選べば良いのか、それぞれの違いやメリット・デメリットについて疑問や不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、副業イラストレーターの皆様がご自身の状況に合った申告方法を選べるよう、白色申告と青色申告の基本的な違い、それぞれの特徴、そして選び方のポイントを分かりやすく解説いたします。
確定申告の基本:なぜ申告方法が2種類あるのか
個人事業主や副業で事業所得がある方は、1年間の所得を計算し、税務署に申告・納税する「確定申告」を行う必要があります。この申告方法には、大きく分けて「白色申告」と「青色申告」の2種類が存在します。
これらの申告方法の違いは、主に「帳簿付けの複雑さ」と「税制上の優遇措置」にあります。国は、きちんと帳簿をつけて事業の状況を正確に把握している事業者を優遇するために、青色申告という制度を設けています。
1. 白色申告とは?その特徴とメリット・デメリット
白色申告は、確定申告の中でも比較的シンプルな方法として知られています。
白色申告のメリット
- 帳簿付けが簡単: 白色申告では、「簡易な記帳」が義務付けられています。これは、収入と支出を日付順に記録する程度の、比較的簡単な帳簿付けで済むことを意味します。専門的な会計知識がなくても始めやすい点が最大のメリットと言えるでしょう。
- 事前の届出が不要: 白色申告を選択する場合、税務署に特別な届出をする必要はありません。確定申告書を提出するだけで手続きが完了します。
白色申告のデメリット
- 税制上の優遇が少ない: 青色申告のような特別な控除や特典を受けることができません。特に、事業所得から最大65万円を控除できる「青色申告特別控除」が適用されないため、納める税金が多くなる傾向があります。
- 赤字の繰り越しができない: 事業で赤字(損失)が出た場合でも、その赤字を翌年以降に繰り越して、将来の所得と相殺することができません。
副業イラストレーターのケース
例えば、副業イラストレーターとして始めたばかりで、まだ年間の所得がそれほど多くなく、まずは確定申告に慣れたいという方には、白色申告は敷居が低く、始めやすい選択肢となるでしょう。
2. 青色申告とは?その特徴とメリット・デメリット
青色申告は、白色申告よりも税制上の優遇が大きい一方で、求められる帳簿付けのレベルが高くなる方法です。
青色申告のメリット
- 青色申告特別控除: 事業所得から最大65万円または10万円を控除できます。これは、所得税や住民税の計算のもととなる所得を直接減らすことができるため、大きな節税効果が期待できます。副業イラストレーターの場合、65万円控除を受けるには「複式簿記」による記帳と「e-Taxによる電子申告」または「電子帳簿保存」が必要です。10万円控除であれば、簡易な帳簿付けでも適用されます。
- 赤字の繰り越し: 事業で赤字が出た場合、その赤字を最長3年間繰り越して、翌年以降の所得から差し引くことができます。これにより、翌年以降の税金を減らすことが可能です。
- 専従者給与の経費算入: 同一生計の家族に給与を支払った場合、一定の要件を満たせば、その給与を経費として計上できます。(副業の場合は該当しないケースが多いかもしれません。)
- 30万円未満の減価償却資産の一括経費算入: 通常、高額な備品は数年に分けて経費化する(減価償却)必要がありますが、青色申告の場合、30万円未満であれば購入した年に全額を経費にできます。(例:新しい液タブや高性能PCなど)
青色申告のデメリット
- 複雑な帳簿付け: 最大65万円控除を受けるためには、「複式簿記」という専門的な知識を要する帳簿付けが必要です。これは、お金の出入りだけでなく、その理由や資産の変化まで記録する方式です。会計ソフトを活用すれば比較的容易になりますが、初期の学習コストはかかります。
- 事前の届出が必要: 青色申告を行うためには、原則としてその年の3月15日までに「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。(新規開業の場合は開業から2ヶ月以内)
- 義務の発生: 一度青色申告を選択すると、継続して適切な帳簿付けを行う義務が生じます。
副業イラストレーターのケース
例えば、副業収入が安定しており、今後さらに事業を拡大していきたいと考えている方、または高性能な機材(PC、液タブ、ソフトウェアなど)への投資を考えている方には、青色申告の節税メリットは非常に魅力的です。
3. 副業イラストレーターはどちらを選ぶべきか?判断のポイント
白色申告と青色申告、どちらを選ぶべきかは、ご自身の状況や今後の事業計画によって異なります。以下のポイントを参考に判断してみてください。
ポイント1:年間の所得金額
- 所得が少ない(20~30万円程度まで)場合: 納める税金自体が少ないため、青色申告特別控除のメリットが小さく、帳簿付けの手間を考えると白色申告で十分なケースが多いかもしれません。
- 所得が増えてきた場合: 青色申告特別控除の恩恵が大きくなります。例えば所得が40万円の場合、白色申告だと所得がそのままですが、青色申告(65万円控除)なら所得が0円になり、納税額が大きく変わります。所得が30万円を超え、今後も増える見込みがあるなら、青色申告を検討する価値があるでしょう。
ポイント2:帳簿付けの負担への許容度
- 記帳はなるべく簡単に済ませたい: 白色申告が適しています。
- 節税効果を優先し、多少の記帳の手間は許容できる: 青色申告(特に会計ソフトの導入を前提とする)が適しています。
ポイント3:節税への意識
- 節税を積極的に行い、将来を見据えて事業を成長させたい: 青色申告がおすすめです。赤字の繰り越しや減価償却の一括計上などのメリットを最大限に活用できます。
4. 青色申告を始めるためのステップ
もし青色申告を選択する場合、以下の手続きが必要になります。
- 開業届の提出: 副業を始めて事業所得がある方は、基本的に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出します。
- 青色申告承認申請書の提出: 開業届と同時に、またはその後に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出します。原則として、青色申告を適用したい年の3月15日まで(新規開業の場合は開業から2ヶ月以内)に提出が必要です。
- 会計ソフトの導入検討: 複式簿記による帳簿付けは、会計ソフトを利用することで大幅に効率化できます。初期費用や月額費用がかかるものもありますが、確定申告の手間を考えると導入を検討する価値は十分にあります。
まとめ:自分に合った申告方法を選びましょう
白色申告と青色申告には、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。副業イラストレーターの皆様は、ご自身の現在の収入規模、確定申告にかけられる時間、そして将来の事業計画を考慮し、最も適した申告方法を選択することが大切です。
「まずは簡単に始めたい」という方は白色申告から、「しっかりと節税したい」「本格的に事業として取り組みたい」という方は青色申告を検討されると良いでしょう。どちらの選択肢を選んだとしても、日々の収入と支出を記録する「記帳」は、確定申告の準備において非常に重要です。
この情報が、皆様の確定申告への不安を解消し、次のステップへと進むための一助となれば幸いです。